9月20日、東京・表参道の青山ブックセンター本店にて、ナガオカケンメイのトークショーが開催された。これは、今年7月と9月に出版された、『60VISION ロクマルビジョン 企業の原点を売り続けるブランディング』『デザイン物産展ニッポン』を記念して開催されたもの。会場には130名を超える来場者が集まり、キャンセル待ちの列が続いた。

ナガオカケンメイが現在取り組んでいる「ものづくり」に関するプロジェクトは大きく二つある。企業による「ものづくり」がテーマの60VISION、そして、地方による「ものづくり」に焦点をあてたNIPPON VISIONだ。前者のドキュメンタリーブックが『60VISION』であり、後者が同名の展覧会に合わせて刊行された書籍『デザイン物産展ニッポン』と対応している。
この二つのプロジェクトは、一見違うようだが、ナガオカは「どちらも構造は同じ」だという。
「今、日本のものづくりが崩壊しつつあるんです。自分たちの会社が何をつくっていいのか分からなかったり、自分たちの会社の個性が見えなくなってきています。さらに、つくったものをどうやって売ることが自分たちらしいのかも分からず、また、若い後継者がその事業を継ぎたいと思っていない、など。このことは、“自分たちの会社”という言葉を、そのまま“地方”や“伝統工芸”という言葉に置き換えても通じるんです。そうしてみると、日本のものづくり企業も、地方の伝統工芸や地場産業も同じ問題を抱えていることが分かりますよね」
ナガオカのやり方の特徴は、個人的な気づきを発展させ、普通の人が分かる形に表現し、解決するための方法を考えて実際の行動に移すことにある。トークショーでは、そんなナガオカ式プランニングのルールも公開された。
「まず、自分が本当に興味のあることを、同じように興味を持っている人とやりましょう。2つ目は、NHKのようにやる。これは『トップランナー』という番組に出たときに気づいたのですが、専門用語や業界用語に頼らずに、みんなが分かるように公平に伝えるということです。3つ目は、出版物になるのかどうか。僕が本というスタイルを好きだということもありますが、自分の考えたことや活動をまとめたものが出版物としてきちんと成立するのかどうかを、その活動が一定のクオリティーを満たしているのかの目安にしています。4つ目は、流行やトレンドを利用しないということ。長く続けていきたいですから、いつ止むかもしれない追い風をあてにしたくはありません。5つ目は、できるだけ、さらけだす! 僕は、失敗しそうなら正直に言ってしまいます(笑)。最初から立派な完成形を目指さなくてもいいんです。そして最後、6つ目のルールは、自分もお金を出すということですね」
2時間にわたるトークショーでは、このほかに「Gマークの現状を否定しながら、賞をくださいという内容」(ナガオカ)という、今年度の「グッドデザインエキスポ」用のプレゼンテーション映像や、D&DEPARTMENT PROJECT KAGAWA閉店の裏話など、ナガオカの多岐にわたる活動の様子がリアルに語られた。[編集部]

ナガオカケンメイ
1965年生。1991年、デザイナーの原研哉氏と日本デザインセンター原デザイン研究所を設立。1997年ドローイングアンドマニュアルを設立。映像の新しい可能性を提示する「モーショングラフィックス展」を企画。以後、4年間開催し、計2万人を動員。2000年、デザインとリサイクルを融合した新事業「D&DEPARTMENT PROJECT」を展開する。2003年、「60VISION」などの活動に対して、グッドデザイン賞川崎和男審査委員長特別賞を受賞。現在、地場産業の若いつくり手とともに、日本のデザインを正しく購入できるストアインフラをイメージした「NIPPON PROJECT」を47都道府県に展開中。
http://www.d-department.jp/

▲ナガオカの活動のスタンス

▲60VISION参加企業全12社

▲60VISIONの展示会

▲60VISIONのルール

▲NIPPON VISION、初回の展覧会風景

▲NIPPON VISIONの関連展覧会「デザイン物産展ニッポン」の様子

▲NIPPON VISION(デザイン物産展ニッポン)のルール
[書籍紹介]
『60VISION ロクマルビジョン 企業の原点を売り続けるブランディング』
ナガオカケンメイ著
本書は、2002年からナガオカ氏が老舗企業12社と取り組んでいる、ブランドづくりの新しいプロジェクト「60VISION(ロクマルビジョン)」の考え方と、その軌跡をまとめたドキュメントブック。60VISIONでは、企業から見向きもされない廃番商品の中に、その企業のものづくりの原点を見出し、復刻、ロングセラー商品として育てていきます。その過程を通して、企業自身のブランド価値もつくり上げるという、ものづくり企業のための、これまでにない新しいブランディング手法です。
判型:A5判/240頁/2730円(税込)
好評発売中
『デザイン物産展ニッポン』
ナガオカケンメイ/企画・構成 日本デザインコミッティー/制作
47都道府県から、日本のものづくりの「今」を感じさせる5つの物産を集結させたデザイン展「デザイン物産展ニッポン」の公式カタログとなる本書。ナガオカ氏は、同展のコミッショナーとして、「その土地で生まれた伝統工芸」「伝統工芸にデザインが加わったもの」「その土地ならではの食品に、デザインが加わったもの」など、5つの視点から、全235点をセレクトしました。書籍の特典として「旅+DESIGN」と題し、47都道府県別「デザイントラベルガイド」を掲載。1泊2日で、観光・食・宿のデザインを満喫できるナガオカケンメイ セレクションの旅案内が付きます。
判型:A5判/328頁/2310円(税込)
好評発売中
※情報は2008年9月30日現在のものです。
※このページの情報は編集部の独自取材に基づき掲載しています。無断引用・転載は固くお断りします。
